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目次
・はじめに
・設例検討
・分布図
・順位図
ここでは、「部門別」の観点から、会社の見える化の必要性を記述します。
「部門別」の観点とは、「損益」の観点の一部、ないしは詳細版と考えて頂いてよろしいと思います。
「損益」グラフを部門別に表示すれば、「部門別」グラフは作成できますが、それだけでは不十分です。
各部門は、各部門間で相対比較(ベンチマーク)することで、その存在価値(優劣)が分かります。
なお、「資金」も「部門別」に見える化できれば理想なのですが、それは実際上は不可能です。例えば、本部が各部門の共通材料等を一括仕入れした場合、その資金を各部門に請求し、各部門は、本部に対して支払を起こしているというのであれば、各部門の資金フローを集計可能ですが、通常、部門別損益集計のため本部と各部門の損益認識(売買)処理は行われますが、資金まで動かすのは、不経済すぎて行われないため、たとえ、現預金が各部門に備わっていたとしても、各部門の資金フローを集計することに意味がなくなってしまうからです。
つまり、「部門別」の観点については、「損益」のみが集計の対象となります。
ここではみなさんのイメージ化を容易にするため、部門イコール店舗とします。各店舗別の損益の相対比較をすると考えて下さい。
グラフA (単位:億円)
↑利益 →売上
売上と利益で各店舗をプロットしたものです。
みなさんはこんなイメージを持つと思いますが、実際には、
グラフB (単位:億円)
↑利益 →売上
こんな形が一般的です。
この設例グラフから分かるのは、
全体の1〜2割の店舗が全体を牽引しており、その他の店舗がお荷物状態になっている
全体の3〜5割の店舗が赤字
売上が相対的にあるにも拘わらず、利益が出ていない店舗がある
売上N0.1が利益No.1とは限らない
みなさんなら、このグラフを見て、次に何をしますか?
まず忘れてはいけないのは、このグラフの集計期間の確認です。
例えば、集計期間がある特定の月であれば、その月特有の事情があるかもしれません。
特定の月特有の事情を薄める意味で、期首からの累計値でこのグラフを作成し、検討することをお勧めします。
ここではグラフBは期首からの累計値(設例では7ヶ月の集計値)により作成されているとします。
みなさんが経営者なら、どーしますか?
容易に考えられるのは、赤字店舗の内容検討です。
ここから先は、その店舗の月次損益グラフを利用します。
例えば、最も赤字を出している店舗の月次損益グラフを出すと次のようであったとします。
グラフC (単位:億円)
進行期は、現在7ヵ月営業時点であるため、グラフの棒が7本しかないと考えて下さい。
どのように考えますか?
「ここ数年は、**ショックの影響もあり、景気がかなり悪いから。もう少し様子を見よう」という発言が出てくるかもしれません。
グラフD (単位:億円)
こーなるとどーでしょうか?
このグラフはグラフCの前4年間を追加したものです。
**ショックがどーとかの問題ではないことが分かると思います。
もちろんこの設例は意図的に、症状固定を作り出しており、常にこうなる訳ではありませんが、問題を認識しつつ、放置されているケースは多々あり、より長期でグラフ化されてしまうと、誰もが納得せざるを得ない状況をつくることができる、ということを理解して頂くための設例と考えて下さい。
以上でご理解頂きたい点は、分布図でベンチマークを行い、部門の相対評価を行うのは、各部門の相対価値を関係者が共有するためであり、その先の検討には、部門別の損益グラフが必要になるということです。
次の章では、各部門の順位グラフを検討し、会社全体の問題点について見ていきたいと思います。
グラフE (単位:億円)
各店舗(部門)を利益順に並べたグラフです。
グラフF (単位:億円)
グラフEの利益部分を積み上げグラフにしたものです。
結果的に、一番右端のグラフの数値が全体の利益額になります。
全体で約5億円の利益が出ていますが、上位2店舗で既に、5億円以上の利益が出ていることが理解できると思います。
この例では件数ベースで上位約20%で全体の利益の約140%の利益が出ていることになります。
これは決してイレギュラーな現象ではありません。
件数ベースで上位約20%で全体利益の数百%を構成する場合もあります。
何%の利益構成比が望ましいかなどは、検討の意味はありません。
重要なのは、この時系列推移です。
会社を継続すると、以下の兆候が必ずと言っていいほど発生します。
グラフG (単位:億円)
会社を継続すると、必然的に規模の拡大が行われます。
部門(客先・店舗等)の数は、増大します。
全部が一定率の利益を出す(グラフは右肩上がりの直線的なものになる)のであれば良いのですが、現実は上記の形が出現します。
会社を継続すればするほど、胴体の部分(ほぼ収支トントンの部分)が長くなっていきます。
つまり、客数はドンドン増えるけど、利益が増えない状態です。
客数が増えても固定費が増加しない仕組みを構築できない限り、必然的に固定費は増大してしまいます。
いづれ会社はこの固定費の増大に耐えられなくなります。
御社にこの症状は出ていませんか?
時系列推移を確認してみてください。
なお、以下のサービスを利用することで、これらのチェックを直ぐに行うことができますので、検討してみるのも良いでしょう。 |