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目次
・はじめに
・設例検討
月次推移
損益分岐
・まとめ
このレポートでは、財務数値をグラフ化することが、いかに損益状況を把握することに役立つか、という点について解説させて頂きたいと思います。ここで言う財務数値とは一定期間の会計仕訳データを集計したものです。決算書や月次試算表がその代表例です。
皆様は、どのように財務数値を会社経営に利用されていますでしょうか。
多くの場合、月次試算表を毎月作成して、経営成績と財政状態をチェックしていることと思います。
ここでは、月次試算表のうち損益(経営成績)をグラフ化する場合を例に設例検討を行ってみます。ここで利用しているグラフは、全てEXCELで作成したものですので、皆様も、同様に作成できるものです。
例えば次のような月次試算表が、皆様のお手元に届いたとします。この会社は12月決算の会社で、第13期7月(以下、「最新月」と言います。)の月次試算表が手元に届いた状態です。
月次試算表 |
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(単位:千円) |
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13期7月 |
構成率 |
12期7月 |
構成率 |
増減 |
売上 |
92,391 |
100.0% |
64,528 |
100.0% |
27,863 |
売上原価 |
33,080 |
35.8% |
32,094 |
49.7% |
986 |
売上総利益 |
59,311 |
64.2% |
32,434 |
50.3% |
26,877 |
*** |
* |
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* |
|
* |
*** |
* |
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* |
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* |
当期純利益 |
3,592 |
3.9% |
-18,292 |
-28.3% |
21,884 |
累計月次試算表 |
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(単位:千円) |
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13期7月 |
構成率 |
12期7月 |
構成率 |
増減 |
売上 |
678,920 |
100.0% |
657,573 |
100.0% |
21,347 |
売上原価 |
250,515 |
36.9% |
249,194 |
37.9% |
1,321 |
売上総利益 |
428,405 |
63.1% |
408,379 |
62.1% |
20,026 |
*** |
* |
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* |
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* |
*** |
* |
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* |
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* |
当期純利益 |
45,863 |
6.8% |
52,103 |
7.9% |
-6,240 |
おおよそ、月次試算表は、次の順序で検討が行われていることと思います。
・経営者であれば、おおよその毎月の売上金額は頭に入っているはずですので、まず最新月の売上金額の確認
・最新月の売上金額は、対前期や対前月で増えたか、減ったか、またその幅の確認
・最新月は黒字か、赤字か、またその幅の確認
・最新月の原価率(または売上総利益率)の確認
・人件費の額、構成比の確認
・特段に注意を要すべき費目(各会社により異なりますが、例えば広告宣伝費)の額の確認
等々です。
また、累計月次試算表を利用して、最新月だけでなく、期首からの累計値で同様の検討も行い、異常な増減等に気づけば、その内容説明を求め、増減理由等に納得できれば、そのままにするか、何らかの対応策を考え、指示を出していることと思います。また、会社によっては、これらの数値をグラフ化して、経営管理に役立てている事と思います。ここでは、そのグラフ化について見ていきます。
G@ - 月次損益 (単位:千円)
まずグラフ化というと、このグラフを思いつくと思います。売上、売上総利益、利益の月別状況が分かります。一方で、黒字の月と赤字の月が混在して、最新月までの年度ベースで黒字なのか赤字なのか等、年度の状況が分かりませんので、次に、これを年次累計グラフにしてみます。
GA - 月次損益年次累計 (単位:千円)
このグラフはG@を年次累計(12ヵ月サイクル)グラフにしたものです。最新月までで、黒字なのか、赤字なのか、また、その幅(金額)等年度の状況を確認できます。一方で、対前期同月比で増えたのか、減ったのかが明瞭ではありませんので、次に、これを対前期同月比グラフにしてみます。
GB - 対前期同月比 (単位:千円)
このグラフはGAを対前期同月比グラフにしたものです。設例では11期からのデータを処理しているため、その翌期である12期からのグラフになっています。一方的にマイナスサイドにグラフが伸びている場合は、減収減益トレンドが止まらないことを表し、その逆に、一方的にプラスサイドにグラフが伸びている場合は、
増収増益トレンドが継続していることを表します。また、売上と利益のグラフ方向が逆に伸びる場合がありますが、これは増収だけども減益、減収だけども増益といった状況を示します。損益の増減を更に、部門別損益の増減に分解してみると、より多くのことが分かります。
GC - 対前期同月比_部門別 (単位:千円)
このグラフはGBの最新月(第13期7月)を部門別グラフにしたものです。なお、部門は、顧客、店舗、地域等各社で任意に設定されていると思いますが、ここでは、店舗で設定しています。L店が相対的に、減収・減益幅が大きいため、次は、L店の時系列グラフ(G@〜B)を作成し、この減収・減益が一時的なものなのか、トレンドとしてのものなのかの検討に入ることが望まれます。
ここからは、損益分岐グラフについて見ていきます。損益分岐グラフでは、「限界利益」という言葉が出てきます。これは、売上増加に伴い一定率で増加する利益のことで、一般的には「売上総利益」が該当しますが、売上原価に固定費が含まれている場合は、その固定費を売上総利益に加えたものが限界利益になります。ここでは、「売上総利益」=「限界利益」とします。
教科書的な損益分岐グラフは以下のようになります。
GD - 損益分岐 (単位:千円)
売上→
これは、前期(12期)の損益分岐グラフです。「固定費」と「限界利益」の線が交わったところの売上高が「損益分岐点売上高」と呼ばれます。このグラフで、売上高約10億円のところの限界利益を見ると約6億円発生しています。一方で固定費が約6億円発生していますので、結果的に両者の差額である利益がゼロとなります。この会社の場合、約10億円が損益分岐点売上高であり、売上が約10億円ならば損益トントン、未満ならば赤字、超ならば黒字、というのが会社の損益体質ということになります。実際の売上が約12億円であった場合は、売上12億円のところの限界利益を見ると約7億円発生しており、固定費の線を約1億円超えていますので、約1億円の利益が発生したことが分かります。
この分析は社外の人間でも、決算書を見れば行うことができ、会社の損益体質を知る点で有効な分析ですが、この分析は基本的に、過去1年間を振り返って行うための分析であり、経営に携わる社内の人間であれば、期中に月次データを入手できますので、横軸に売上金額ではなく、時間(時系列)をとったグラフを毎月作成し経営管理に役立てることができます。
GE - 損益分岐(月次ベース) (単位:千円)

今期の固定費については、最新月までの固定費を集計します。毎月このグラフを見ると、限界利益が伸びて、固定費も伸びる状態、例えれば固定費と限界利益が追いかけっこしているような状態になります。例えば、13期11月の時点で、今期の固定費の額が前期の固定費に並んだとします。この時点で、限界利益は前期12月の限界利益の金額になっていますでしょうか。 これを下回っていた場合、年度で減益になる可能性が高くなります。会社を継続すれば、一般的には規模の拡大、つまり固定費の増大が発生します。
固定費増大と共に、限界利益は増大していますでしょうか。限界利益の増大以上に固定費が増大すると、いずれ会社は固定費負担に耐えられなくなります。
GF - 損益分岐(月次ベース_部門別_A店) (単位:千円)
このグラフは特定の部門(設例ではA店)の数値により作成した損益分岐(月次ベース)グラフです。各部門に紐付けできる固定費は、可能な限り各部門に集計することが望まれますが、一方で、各部門収益に貢献している固定費でも、各部門に集計できない固定費が多く発生します。本社費等の固定費がその典型例です。従って、共通費配賦前の固定費を利用して損益分岐分析を行うと、多くの部門が黒字の状態(限界利益が固定費を超えている状態)になるはずです。ただその利益で十分なのか、という観点から、本社費等共通費を各部門に配賦した後の固定費の線を加えると、赤字(限界利益が固定費を下回る)になってしまう部門が出てくるはずです。どのような基準で本社費等共通費を各部門に配賦するかで結論が違ってくるので、各会社の実情に合わせた配賦基準を使ってください。ここでは、各部門の売上高を基準に、配賦を行っています。
このレポートで紹介したグラフは全て皆様がEXCELを利用して作成できるものです。損益を「比率」でグラフ化してみる、売上を「数量」と「単価」に分解してグラフ化してみる等、適宜工夫して、グラフを経営管理に役立ててください。経営管理にグラフを利用する場合は、是非部門別でのグラフ化を行ってみてください。「見えなかったものが見えてくる」、または、「気づいていたけどハッキリさせていなかったものがハッキリしてしまう」、という経験をされると思います。
当然ですが、財務数値をグラフ化しても売上は増えません。「気づき」を与えて、次のステップへの決断を早める効果があるに過ぎません。しかし、決断が遅い、ないしは決断をしないが故に、儲からない事業や客先をドンドン増やしつつ、一方で固定費を増大させ続ける、という多くの会社がハマる道を回避するには、グラフ化による「会社の見える化」が最適であると思います。
一方で、種々の部門別グラフを毎月作成するとなると膨大な労力を必要としますので、インターネットを利用して、常に最新の財務データに基づきグラフを自動作成し、更に分解したいグラフをクリックすることで直ぐに詳細データを明らかにできるサービスもありますので、財務数値のグラフ化(会社見える化)を進めたい場合は、グラフ化サービスを利用するのも一つの選択肢です。なお、このサービスは御社に既にあるデータをそのまま利用して、つまり、御社の従来のデータ処理の流れを変更することなく、直ぐに運用開始が可能である点も大きな特徴です。
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